【デザイン礼賛】感情を揺り動かす、フンデルトヴァッサーの有機的で自然と調和した建築

デザイン

2021.06.25

心を大きく揺さぶられた圧倒的なデザイン。
生き方を示してくれた夢溢れるデザイン。
人と人をつないでくれた感動的なデザイン、、、
デザインと日々向き合う弊社スタッフが絶賛し崇めるデザインとは何か?
それぞれの視点とストーリーを交えご紹介致します。

東京の空間デザイナーの岡田です。
子どもの頃、ドクタースランプアラレちゃんの世界が大好きで、自分の住む世界も、こんなやわらかな曲線の車や家やモノで構成されてたらいいのに‥と思っていました。
“フリーハンドのやわらかな楽しい世界”
そんな世界が現実にある!?と知ったのは、空間デザイナーとして働き始めた20代のときでした。

絵で描く世界が現実にある

デザインのアイデアを考える時、会社を抜け出して、街を歩いたり、本屋やカフェにいくことが多かったのですがそんな時に発見したのが、フンデルトヴァッサーの建築、「絵」でした。

フンデルトヴァッサーの本

ウィーンの伝統的な建築物の間に、フリーハンドで描かれた素敵な建物の「絵」。
この「絵」がそのまま建物として再現されたのが「クンストハウスウィーン」という美術館と公共住宅です。
外壁も柱も建物の内部の床、壁、天井もフリーハンドのようなゆるやかなラインで構成され、子どもの頃に憧れた夢のような世界が現実にある!!と、その出会いはとても衝撃的でした。

広い空の下にあるものは、すべて自然の一部である

建物の写真

ウィーンの中心にあるこの建物は、「人間と自然の関係が変化しつつあることを考慮し、新たな方向性を探究、新しいミレニアムの始まりにおける芸術の使命を果たす」として、1989年-1991年に渡って元トーネットの家具工場(!)を改築し美術館として蘇らせたものです。

フンデルトヴァッサーは以下の言葉で語っています。

『聖書の時代から「大地を支配せよ」と言われてきたが、近代の人はこの考えを濫用し大地を殺してしまった。家を建てることで殺してしまった自然を屋根の上に取り戻さなければいけない。草屋根は騒音を吸収し、水の浄化、燃料費の節約にも繋がる』

『まっすぐな床は建築家の発明である。機械にはふさわしいが、人間にはふさわしくない。建築は人間の能力を高めるためのものであるべき、起伏のある床を歩くことで、人間らしいバランスを取り戻す』

『窓は内と外の掛け橋である。多種多様な家庭があり、個人というものは決して画一的ではない、アパートに住む者は窓から身を乗り出し外壁を好きに塗ることが許されなければいけない』

ユダヤ人であるフンデルトヴァッサーの生い立ち、個性的なファッション、建設現場を見に行った時に浮浪者と間違われたエピソードなどなど、本人そのものにも興味が湧きました。
かわいらしい世界観だけでなく、自然と人間の調和を大切にした建物のコンセプトや、偏見や差別への考えや思想にふれるにつれ、「いつかウィーンに行って、作品を見てみたい!」と掻き立てられました。

クンストハウスを見にウィーンへ

30代は海外に縁のあった時期で、あちこち旅する機会がありました。
そんな中、偶然にも1人旅の機会が訪れたので、それならば!とウィーンのクンストハウスを見にいくことにしました。

ウィーン初日、興奮しすぎたせいか少し熱がでてしまい(笑)、体調万全ではなかったのですが、いきなりお目当てのクンストハウスにバスで向かいました。

ウィーンの写真

バスを降り、地図をみながら歩いていると、街路樹の大きな木に見え隠れするカラフルな外壁のデザインが目に飛び込んできました。
わくわくしながら近づくと、柱や、窓枠、床のレンガの曲がりくねった模様など、見たいところが多すぎてなかなか建物の中に入れません…
このレンガやタイルのデザインは、図面があったのか?それとも職人さんの感性に委ねられていたのか?
ひとつひとつとても手が込んでいて、とても濃密な空間に感銘を受けました。

建物の中に入っても、階段も一段ずつ形状も高さも違うし、床もゆるやかに起伏している…ところどころにタイルで虫などが描かれていたり、同じデザインが羅列しているものはひとつもなく、全てのパーツがひとつひとつオリジナルで存在し、空間、世界観を構成している —まるで深い森の中にいるような不思議な感覚でした。

すっぽり異世界に入りこんだまま、ミュージアムでフンデルトヴァッサーの絵を見ます。
空間のカラフルさに負けない、ウィーンらしい金や銀などのキラキラした素材が使われていました。

興奮しながらあれこれ見ていたら、すっかり体調が悪かったことも忘れ、熱も下がり、お腹が空いてきたのでカフェへ。
自然光がたっぷり入り、植物がわんさか吊り下がっている心地良い素敵な空間でした。
数年経った今でも、あの時の光景や感覚をはっきりと思い出すことができます。

自然と環境の調和、そして人の感情を揺り動かす空間

1989-1991年に改装されてから17-18年経った頃に私は訪れたのですが、レンガやタイル、どの素材も使い込まれて、その場に調和し、雰囲気を醸し出していました。
街路樹がすっかり落葉した時期に行ったのですが、夏の繁った時期はさらに素敵な景観だろうなぁと思います。

当時、興奮気味の私に、美術館の方が
「この美術館は、ウィーン市民や芸術の知識がない人たちにも受け入れられ、感情を揺り動かされる存在なのよ」
と教えてくれました。
遠方から憧れの場所に訪れた私だけでなく、身近な存在の人たちの感情をも揺さぶる…
改めて、空間の持つ力の強さを感じるできごとでした。

私が空間デザインの仕事をしていて、一番おもしろさを感じるのは、何もない「0」の状態から目的に沿ったストーリーを考え、動線や造作の形状、素材、光、音、匂い、映像など、様々な要素を用いて意識や感情に訴えかける空間をつくりあげていくこと…
空間が持つ力や人に与える影響、自然との調和など…興味はこれからも続きそうです。

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